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毒舌と個性
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毒舌はこんなにも使われている!
お笑い界では、よく毒舌が使われます。一般的に毒舌とは、「辛辣(しんらつ)な皮肉や悪口をいうこと」なので、イメージ的には悪い印象を受けると思います。しかし、お笑い界では必ずしも悪いものではない…というか、むしろ必要不可欠なものなのです。
お笑い演芸は、基本的に「世間に対して皮肉をいう」、「特定の人物を馬鹿にする」ことで、笑いを誘っています。演芸の基本スタイルとは、「とぼけた応答をするドジな人物(ボケ役)を登場させ、こっけいな様子をつくりだす。さらにそれを馬鹿にする(突っ込む)ことで、面白味を倍増させる」という流れなのです。
※1
ちなみに単なる「子鹿」ではなく、「生まれたての子鹿」と表現したのは、物事を何かにたとえる場合は、その状況を大袈裟に表現した方が面白味が増すからです。
トーク番組でも笑いをとる手段として、ゲストをネタに毒舌をいうときがあります。仮に話の流れで「一瞬でも相手がオドオドするような状況」(もちろん本気ではなく…)になったとすると、「あなたは生まれたての子鹿ちゃんですか?(笑)」などと、そのときの特徴を瞬時に読みとっていうのです。
「生まれたての子鹿」は弱々しいイメージがあり、言葉だけをみれば相手のことを褒めているわけではないので毒舌に違いはありません。しかし、相手も冗談と分かっているため、怒るどころか笑ってしまうのです。(※1)
同じくネタで相方が泣いたとき、「サイレンみたいにビービー泣くな!」と突っ込むよりも、「壊れかけたサイレンみたいにビービー泣くな!」と突っ込んだ方が面白さが増します。大袈裟に表現することで毒も増しますが、同時にその状況も想像しやすくなります。すると内容が頭にスムーズに入っていき、笑いに結びつきやすくなるわけです。(ただし捻りすぎると逆効果になるので、あくまで簡潔に!)
これらの手法は、別に近年に限って使われているわけではありません。古典的なところでは、びっくりした顔のことを「ハトが豆鉄砲くらったような顔」といいます。落語でも「なんだいおめぇ、そんなハトが豆鉄砲くらったような顔してぇ!」なんてフレーズがでてくると、聞いている方は笑ってしまうのです。仮にこれが日常会話であっても、よほど冗談が通じない人でなければ、それをいわれたからといって怒る人はほとんどいないでしょう。
こういった表現は日本人は馴染みが深いだけに、使い方によっては大きな笑いをとる手段になります。とくにアドリブの会話が上手い人は、形容の仕方が非常に上手いのです!それだけに、芸人を目指すならば(別に目指してないですか?(笑))是非マスターしておきたい技術ですね。(^_^)
基本は物事を裏側から見る!
毒舌は「その人の個性を感じることができる」ため、言葉として非常に大きなインパクトを持っていて、それだけに面白さを倍増させる効果があります。そして、それは物事を違う角度から見たときに始めて理解し、使うことができるものです。
例を2つ挙げましょう。
1.「何もないところから物を出現させる手品」を見た。
そこで単純に「素晴らしい!」と喜ぶのもいいですが、それは当たり前のように誰でも思う感情なので、その言葉からはインパクトも面白味も感じられません。しかし、そこで「今どきそんな手品じゃ小学生だって喜ばないよ!」と、突っ込んだとします。すると言葉自体は厳しいですが、そこには「当たり前ではない言葉」、いわゆる「個性」が感じられ、面白味があるのです!
2.「主婦が高級料理を食べている」という、テレビ映像を見た。
そこで「美味しそう!」といったのでは、当たり前の感想なのでやはり面白くありません。この場合も、「本当はたいして味も分からないんじゃないの?こういう人に限って、安物でも騙されて『やっぱり高級なものは違うねぇ』なんていうんだよ!」と、いってあげると面白味がでてきます。(笑)
もちろん内心では素直に「美味しそう!」と思ってかまいません。ただし、笑いに結びつけるには、あえて本心とは違ったことをいうことも必要なのです。(重要!)
毒舌は物事をまっすぐに見ていても使うことはできません。なぜなら「単純に見たまんま」、「思ったまんま」では、物事の裏側は分からず、当たり前のことしかいえないからです。毒舌という個性をだすには、冷静な判断力(悪くいえば冷めた目)や、良い意味でのひねくれが必要になってきます。
「良さそうなことをいっているが、実は裏があるんじゃないか?」、「建て前だけで、本当の目的は別にあるんじゃないか?」…など、物事をひねくれて考えることで始めて見えてくる部分は世の中にたくさんあります。つまり、そういった部分に着目し、色々な角度から物事を見られれば、どんな状況でも面白いことがいえるようになります。
確かに毒舌は厳しい意見ではあります。しかし、もともと人間は完璧な生き物ではありません。表面上では綺麗ごとをいっていても、誰でも悪く思うときはあります。それを隠さずさらけだすことによって、人は人間味を感じ、その人に対して好感や信頼感を持ったりするのです。それに対し、本心を隠し「綺麗ごと」、「正しいこと」しかいわない人は、逆に信用できないでしょう。そういう意味でも毒舌は、普段なかなかいいにくい言葉ですが、実は人間味のある言葉であり、上手く使えば面白さを感じることができる表現なのです。(^_^)
演芸では、ボケに対して、容赦なく「お前アホか!」と突っ込むのも毒舌の1つです。番組で、ゲストに毒舌をいったときも、相手は怒るどころか爆笑します。逆に毒舌がまったくなく、おとなしい言葉ばかりのバラエティー番組だったらどうでしょうか?(想像してみて下さい)いわずもがな会話は平坦に流れていくだけで、番組としては面白味のかけらも感じられないのです。
ひねくれて毒舌を使ってみよう!
「ひねくれることで面白味をだせる」ことは、理解できました。とくにアドリブ主体のフリートークでは、1つの話題がでたときに「その物事をいかにひねくれて考えられるか」が、勝負どころです。これは、その人の性格も関係してきますが、あまりに素直すぎる人では、面白い発想は浮かんできません。
基本的に面白い人間とは、単純に周りに流されず自分の一貫した考えを持っており、そのため周りが思わないようなことを思いついたり、周りが思っていてもいえないことをズバッといえる人なのです。
では、ひねくれを応用した一例を紹介しましょう。次のネタは、世の中にある物事に対して、様々な角度から突っ込みを入れています。
一言ツッコミ!
[食品にツッコミ!]
・ペヤングソース焼きそばって、本当は「焼きソバ」じゃなくて、「茹でそば」だよね!
・ミロって美味しいよね。溶けないけど!
・ポッキーって、チョコだけ食べたらプリッツだよね!
・食品CMの「美味しくなりました!」を聞いて…。美味しくしてね、最初から!
・ジュースの自販機の「つめた〜い♪」を見て…。なんか、しゃべり方がギャルだよね!
・「果汁1%」のジュースを見て…。はっきりしてほしいなぁ。入れるのか、入れないのか!
・アイスの「3本当たり!」って嬉しいけど…。もっと考えようよ、お店の立場も!
・自信満々なタイヤキ屋のご主人。別にいいってもんでもないよ。あんこが多いからって!
・サクマドロップスは定番だけどね。缶の中にくっついて出てこないのは!
・駄菓子の「たこ焼き風のりバターソース味」。適当に味をつけるのは止めようよ。ネタ切れなのは分かるけどさ!
・「ピザまん」をよく買うんだけど、一度も見たことないよ。ピザ入ってるとこ!
・目玉焼きってよく考えたら、すごい怖いネーミングだよね!
・石焼きイモ屋でよく買うんだ。たまに車のスピードが速くて、追いつけないけど!
[品物にツッコミ!]
・「ゴホンときたら龍角散」というCMを見て…。粉っぽくて、余計にむせるんですけど!
・古新聞って、一見、名前だけじゃ分からないよね。古いのか新しいのか!
・スポーツカーの、上下開閉式ドアってカッコイイよね。天井低いと出れなくなるけど!
・早口言葉の「東京特許許可局」。言いにくい以前に、存在しないんですけど!
・占い好きだけど、どうしたらいいんでしょう?雑誌によって結果が全部違うときは!
・小さい頃はよくガチャガチャをやったなぁ。でも、今だ知らないんだ。正式名称を!
・「誤って飲み込んでしまった場合は…」の注意書き。何も書くことはないだろう。1mもある、ぬいぐるみに!
・穴あき包丁って便利だよね。微妙に洗いにくいけど!
・男性ファッション誌を見て…。自分には判断できないなぁ。それが本当にオシャレかどうかは!
・洗剤のCM、「こんなに真っ白になりました!」。でも実際は、撮影順序が逆なんでしょ?
[テレビ番組にツッコミ!]
・ゴジラの子供に、ミニラっているよね。一体、誰なの?母親は!
・ゲゲゲの鬼太郎は、「試験も何にもない♪」らしいね。でも、なぜ「墓場で運動会」はあるの?
・ガンダムのホワイトベース艦長ブライト・ノア。無理があるんじゃない?18歳っていう設定には!
・キャプテン翼は「ボールは友達だよ!」と言う。でも、その友達をガンガン蹴ってるね!
・一休さんは、「端」ではなく「真ん中」を堂々を歩いた。それって、とんちじゃなく屁理屈だよね?
・銭形平次は悪を退治する。でも良くないと思うなぁ。お金を粗末に扱うのは!
・奥様方は「キムタク、キムタク」とうるさいけど、それってキムチとたくあん?
[その他にツッコミ!]
・URLの「WWW」。これだけ見ると、プロレスの団体かと思うよね!
・音楽用語のサラウンド。たまに聞き間違えない?「皿うどん」に!
・野球漫画を読んで…。なんでピッチャーとキャッチャーは、テレパシーで交信してるの?
・学園ものの漫画を読んで…。転校生がきても、都合よく自分の隣の席は空いてないでしょ!
・昔話の「桃太郎」を読んで…。仮にお婆さんが桃を拾わなかったら、桃太郎は海で漂流してたね!
・昔話の「おむすびコロリン」を読んで…。追いかけて食べるつもりなの?土まみれのおむすびを!
・ライブで、激しくドラムを叩く。でも別にいいんじゃないかなぁ。わざわざ水しぶき浴びなくても!
・不動産の物件で「駅から徒歩5分」。それって、競歩の選手ならってこと?
・スーパーのレジで「1000円お預かりします」。預かったのなら、返してほしいね!
・「転がり込む」という表現があるけど、本当に転がってはいないね!
・なまはげが「悪い子はいね〜か〜?」。でも勝手に人の家に上がり込んでくる、あんたが一番悪いよ!
これらはあくまで一例で、世の中にはネタになるようなことは、たくさんあります。要は、「一般的に多く知られていることを、ひねくれて判断することで、笑いをとりやすくなる」ということです。(^_^)
毒舌を使うときの注意点
毒舌を使うときの注意点があります。それは「度を過ぎた毒舌ではいけない」ということです。
笑いを誘うための毒舌は、「物事を何でもかんでも悪くいえばいい」わけではありません。あまりに度を過ぎた内容では相手も引き、自分の人間としての人格を疑われてしまいます。毒舌をいう人間が、「きちんとした人間だ」と分かっているからこそ、愛情を感じ笑えるわけで、人格を疑われるような人がいっても「単に悪口をいっている」としか感じられないのです。
これが演芸なら「笑わせるためにいっている」ことが明確なので、多少度が過ぎても平気なのですが、日常会話では「どこまでが冗談なのか?」が分かりづらいので、言葉を選びながら発言することが大切です。
また、いくら軽い毒舌でも「相手が本気で悩んでいる物事」に対していったら、本人にとっては笑い事ではすまないし、冗談にはならないでしょう。そのへんは、きちんとその場の空気を読み、考えて使う必要があるわけです。
毒舌は大きな笑いを生みますが、1歩間違えば相手を嫌な気分にさせてしまう恐れもあるため、使い方の難しい諸刃の剣といえます。そのため、「その人にとって冗談と受け止めてくれる内容か」「その人に対してどこまでいっていいのか」など、通常以上に気を遣いながら話す必要があるのです。
※1
例外的に、『番組に視聴者自らが志願して登場するコーナー』があります。これは本人もネタにされる覚悟をして来ているため、ある程度は仕方ないでしょう。
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※2
ただ出演者とはいえ1人の人間に違いはないため、画面に映らないところで(楽屋での挨拶の際など)いいので、フォローすることが大切です。こういうことがきちんとできる人間性があって、はじめて多くの人に喜んでもらえるし、毒舌が意味を持つのです。
言葉は、人を幸せな気分にも、嫌な気分にもします。そこで初心に却って「お笑いとは何ぞや!」ということを、考えてみましょう。お笑いは、基本的にすべての人が楽しめる内容でなくてはいけません。9割の人に受けたいからといって、残りの1割の人を犠牲にしてはいけないのです。
芸人の行動で、お客をネタにする『客いじり』があります。大抵は、芸人が会場にきた特定の客の見た目をけなしたり、皮肉をいったりすることで、他の客の笑いを誘うというもの。もちろん、あくまで冗談でいっているし、それで多くの笑いをとることはできるでしょう。しかし、いわれた本人はどうでしょう?冗談とは分かっていても、自分のことをネタにされ恥ずかしいし、気まずいし、多少なりとも嫌な気分を味わうのではないでしょうか。(※1)
これが同じ出演者の芸能人に対してなら、話は別です。出演者本人も番組を盛り上げるために存在し、それでギャラを貰っている以上、そのくらいのリスクは覚悟する必要があります。(※2)
ただ客いじりは、芸人が番組を盛り上げるためとはいえ、多くの人が視聴している場で一切の許可なく、一般の人をネタにしています。その問題点は、2つあります!
第一に、[一方的な意志伝達]
客いじりは、ネタにされた本人が「冗談でいっているのか?」「その真意は何か?」など、様々な疑問が浮かんだとしても、芸人に対してリアルタイムに答えを聞くことができない状況にあります。
その理由として「単純に恥ずかしい」「番組進行を邪魔してしまう可能性がある」など多々ありますが、どちらにしろ[芸人 → 客]という一方通行の言葉であり、[客
→ 芸人]という逆が存在しない意志伝達方法に問題があるといえるでしょう。
これが出演者なら、素直に疑問や返答、時には突っ込みを相手にぶつけられますが、それもできないお客にとっては誤解が生まれやすく、場合によっては心に傷を受けてしまう場合もあるわけです。
第二に、[毒舌に対してのフォローがされない]
※3
あくまで、「お客を毒のあるネタにするのが良くない」のであって、「お客との会話が良くない」わけではありません。番組を盛り上げ、お客も楽しめるような会話をするぶんには何の問題もありません。むしろ、コミュニケーションとしては良いことでしょう。
出演者をネタにする場合は、番組収録前後に「許可を貰う」「謝罪する」「礼をいう」などのフォローを入れることが可能ですが、相手がお客の場合はそうはいきません。冗談かどうかも分からず、ただ一方的にネタにされ、こちらからは何もいえない。さらに、いわれたらいわれたでフォローもない。これでは、あまりに失礼ではないでしょうか。
お客の中には、お笑い精神豊富で「ネタにされても楽しい!」という人もいるため、「絶対にいけない」とはいえないかもしれません。しかし、基本的に芸人は、お客に対して失礼のないようにするのが当然なので、不快に思うお客もいる以上、やるべきではありません。(※3)
まれに芸人の中には、「どんなことをしてでも、笑いをとるのがプロの芸人だ!」と思っている人がいますが、それは大きな間違いです。お笑いとは、基本的に楽しむため、楽しませるために存在するものです。ましてプロともなれば、お金を貰ってお客を楽しませています。それをどんな理由があるにせよ、楽しませるどころか、多少なりとも嫌な思いをさせていいはずがありません。
確かに、常にすべての人を楽しませることは難しいかもしれません。しかし、最初からそれを放棄するのは、到底プロの姿勢とはいえないでしょう。
「お客にも好みがあるから難しい。しかしプロの意地として正々堂々、1人でも多くの人を笑わせてやる!」という気持ちこそが、本当のプロの精神であり、それをやってのけることに対して、私たちは笑いという賛美の言葉を贈るのではないでしょうか…。
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