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間(ま)

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なぜ間という言葉を使用するのか? 実際に間の重要性を検証する!
間もっと理解しよう! 「言葉の返し」「話題の移行」を瞬間的に行う!


    



なぜ間という言葉を使用するのか?

 お笑い業界では、よく使われる「間(ま)」という言葉。頻繁に耳にしますが「一体どういう意味?」と尋ねられると、大抵の人は返答に困るのが現状でしょう。「一般的に使用される言葉なので漠然と使っているが、具体的な説明はできない」という人が、ほとんどではないでしょうか。
 これはプロの芸人にもいえることです。プロの芸人の中には、演芸などを批評する際、「間が良い」、「間が悪い」といった言葉を多用する人がいます。しかし、私からいわせてもらえば、その人は「実際はあまりよく理解していないで使っている」場合が多いのです。なぜ理解もせず使うのでしょうか?その理由は2つあります。

 第一に、[芸人としてアピールするため]

 例えば、著名人が難解な言葉を多用して演説をする場合があります。このときいっている意味がよく分からなくても、何となく「この人のいっていることは、もっともだ!」という思いがでてくるものです。難解かつ抽象的な言葉を多用し、内容を曖昧にすることによって「この人は理解が難しいすごいことをいっている。それだけその物事について深く理解しているのだろう!」という印象を与えているからです。
 しかし、実際は「難解なことを簡単に分かりやすく説明する」方がよっぽど難しく、難解な言葉を使わず内容を上手に伝えられる人ほど「知的で立派な人」という印象を受けます。
 芸人の理屈も同じで、いっていることを曖昧にすることで「自分はお笑いのことを深く理解している」と、周りにアピールしたいのです。(実際は逆効果なんですけどねぇ…。(^_^;))

 第二に、[他の言葉を使って説明することができない]

 間は、厳密にはきちんとした定義があるのですが、業界では曖昧な意味で使われることも多い言葉です。それだけに細かい理屈がいりません。単純に「間が良い、悪い」と批評すれば、具体的な意味が分からなくても周りも何となく納得してしまう。どうとでも捕れるのだから、批評の際には便利な言葉になります。つまり、今まであまりにこの便利な言葉に頼ってきたせいか、それ以外の言葉が見付けられないのです。

 マグロ(鮪)を見れば、トロばかり有り難がって、「脂がのっている!」
 牛肉を見れば、「霜降りがすごい!」
…と、脂ののり具合でしか素材の良さを評価できない人と同じです。しかし、マグロ本来の味が楽しめるのは赤味の部分だし、霜降り肉をこんなに有り難がっているのは日本人だけです。ようするに自分の考えではなく、周りの人が皆そういっているからと、他人の意見に合わせているだけなのです。(要注意!)
 実際に、笑いを構成する要素は数多くあります。それさえ理解していれば、むしろ間なんて言葉は必要ないといってもいいでしょう。他人の受け売りばかりでは個性的な発想はできないし、それは笑いを生むものとは逆行するものです。自分の魅力を上げるためにも、もっともっと「自分にしかできない思考」を大切にしてもらいたいですね。(^_^)
 ちなみに狂言時代から、息を吸ってはく呼吸のタイミングを「間」といい、その間が悪いことを「間抜け」といいます…。

 

間をもっと理解しよう!

 間をもっとよく理解するために、会話全体の構成を考えてみましょう。
 以前も述べましたが、会話は「話す」ことと「聞く」ことから成り立っています。このどちらかが欠けていては、スムーズな会話はできません。これは当たり前なようで、実は非常に大事なことです!
 仮に、相手に話しする隙を与えず、こちら側が話しているだけだとしたらどうでしょう?相手は疲れるばかりでなく、いいたいこともいえずストレスを溜めてしまいますね。「話し上手は聞き上手」という言葉があります。これは「本当に話上手な人は、相手にも気持ちよく話をさせるものだ」という意味ですが、このことからも自分が話したいことを話しているだけでは、良いコミュニケーションはとれません。
 そうかといって、話を聞いているだけでも相手は反応を感じず、また内容も広がらないため「この人と話していてもつまらない」と、結局は悪い印象を与えてしまいます。つまり、会話は「話す」ことと「聞く」ことがバランス良く繰り返されるのが大事なのです。(^_^)

 会話は、話す人のクセ(言葉の羅列方法、形式など)や、内容(明るい話題、暗い話題など)によって、言葉の速度や間隔に違いがでます。また口調やイントネーション(状況によっても変わる)によって勢いに差がでるし、話のテンポも変わってきます。そういった数多くの要素により、様々な言葉の響きが生まれ、それが全体的なリズムをつくっています。当然、人やその状況によってリズムは違うため、それが周りに与える印象を大きく変えるものになります。(ちょっとややこしいですが…。(^_^;))

 以上のように、「会話のリズムを構成するもの」は多数存在しますが、これらを総して間というわけではありません。確かに広い意味で使う場合もありますが、それでも演芸ではせいぜい掛け合いのタイミング程度の認識でしか使われないのが現状です。間は、近年のお笑い業界では抽象的な意味で使われている言葉だけに、人によって何とでも都合のいいように解釈できてしまいます。そのため、会話に必要不可欠なものをすべて間と称してしまっては、あまりに都合のいい話になってしまいます。

 あらためて確認すると、間は「言葉と言葉の時間的なあいだ」、「リズムを生むための休止」という意味を持ち、お笑い界ではとくに「呼吸のタイミング」という意味で使われます。つまり、あくまで言葉と言葉の空間的時間のことであって、口調やイントネーション、はたまた会話のテクニックすべてを間というわけではないのです。もちろん、どんな小さな要素でも良いに越したことはないでしょう。しかし、間はあくまで「リズムを生む表現方法の1つ」であり、それも「お笑い技術の一部にすぎない」ということを、皆さんにもよく理解してほしいのです。

 

実際に間の重要性を検証する!

 間の重要性について、日常会話、演芸の場合でそれぞれで検証してみましょう。

 [日常会話]

 会話術のテクニックの1つに、「相手に合わせて会話する」というのがあります。これは、話題、声の大きさ、動作、言葉のスピードなど、様々なものを相手に合わせてあげることで、安心感を与えるというものです。これにより、相手が本音を話しやすい状況をつくることができます。
 どんな会話でもこういったテクニックは必要ですが、だからといって「間が非常に重要だ!」と結論づけるのは早計です。なぜなら相手がどんな間で話したとしても、こちらが相手に合わせてあげれば済むことなので、とくに不都合は生じないからです。つまり、片方がきちんとした話し方ができるのなら、もう片方の間が多少悪くても、さほど影響はありません。

 実際に会話をする際は、
「話がつまったりして長い沈黙が流れる」
「相手に話をさせる隙を与えず、こちらばかりが怒涛の勢いで話す」
「相手の話が終わってないのに、話に割り込む」

…という、最低限のことが守られていない状況でなければ、とくに問題はありません。

 会話は、基本的に「相手がリラックスして話せる環境」があれば充分なので、不快感を与えない話し方ができるなら、実際はそれほど間を気にする必要もないのです。仮に問題のある話し方をする人がいたとしても、それは間ではなく、もっと別なところに原因がある場合が多いでしょう。
 結論。日常会話では、会話をスムーズに行うための最低限の間は必要ですが、それさえできていれば、さほど意識して話す必要はありません。

 [演芸]

 演芸は日常会話と比べ、若干違いがあります。
 日常会話では、一方が悪くても、もう一方がサポートしてあげることで上手な会話を行うことは可能でしたが、演芸では演者から観客へは「一方通行の伝達」です。演者の話し方が悪いからといって、観客が修正して聞いてくれることはなく、悪ければ悪いまま評価されてしまいます。そのため、観客の耳にスムーズにネタが入っていくように、演者がある程度リズムをつくっておく必要があるのです。

 演芸の評価には、ネタの内容やセリフの構成なども絡んでくるので、間の善し悪しだけでは何ともいえませんが、やはりテンポ良いリズムをつくれるに越したことはありません。漫才にボケ役とツッコミ役が存在するのも、一方の話をもう一方がアシスト、サポートすることで、テンポを良くできるからです。このことからも、「演芸は日常会話に比べ、間のとり方は重要」といえます。
 しかし、「必ずしも良くなければいけないか?」といえば、そうでもありません。逆に、あえて悪くして笑いをとる方法もあります。「リズムが悪い」というと、聞こえはよくないかもしれませんが、それによって独特のリズムが生まれ、個性をだすことに成功しているのです。要は、「間が悪いことが、結果的に面白いリズムを生みだしている」ということです。

 芸人の中には、個性をだすために、あえてそういった間のとり方をしている者も少なくありません。芸能界は競争率が激しく、その中で生き残っていくには、独自のキャラクター性がなくては駄目で、リズムも例外ではないからです。ただ、それは「どれが良いか。悪いか」の問題ではありません。演芸である以上、スムーズに面白味を伝える必要はあります。そのため、間を正しく理解し、活用できる技術は持っておくべきですが、常に良くしなければならないわけでもありません。実際に、いくらテンポばかり良くても、肝心のネタがつまらなければ、意味がありません。
 結論。演芸は、日常会話に比べ間を意識する必要はあります。しかし、実際は「間が良いか。悪いか」よりも、「間を自在に変化できるか。できないか」の方が重要です。

 

「言葉の返し」「話題の移行」を瞬間的に行う!

 演芸では、瞬間的に言葉を発することが重要になります。詳しく説明しましょう。

 [瞬間的な言葉の返し]

 演芸は、互いに瞬間的に言葉を返し合うことで、スムーズな流れをつくり面白味をだしています。(1度いいかけた言葉をいい直しても面白く感じないため、最低でもセリフを噛むのだけは避けなくてはいけません) 中でも「瞬間的な突っ込み」は、笑いを誘うのに非常に重要な役目を担っています。
 皆さんは、「漫才では、なぜ瞬間的な素早い突っ込みが必要なのか?」と、疑問を抱いたことがありますか?単純に考えれば、ボケをいった後、時間が経過してから突っ込んでも面白くはありません。では、なぜ時間が経過してからでは面白くないのでしょうか?実は、きちんとした理由があります。それを理解するには、笑いが生まれる流れを知る必要があるでしょう。

※1
落語のオチ(言葉の引っ掛け)のように、あえて解答を明かさず、お客自身に意味を考えてもらう状況もある。
このような場合、演者は「理解ができる程度の軽い捻り」を入れ、じわっと面白味をだす手法を使う。

 ボケ役がボケる。するとお客は、無意識に頭の中で話の流れを整理し、ボケの全容を理解しようとします。しかし、そこが問題です。頭で色々と整理するには、少なからず手間、労力が必要になります。それが面白さを半減させる原因になるのです!
 いくら良いネタでも、「前置きが長い」「捻りすぎて内容が分かりづらい」なんてことになると、話の整理で頭が一杯になってしまい、笑うことに集中できなくなります。このことからも、ボケの意味をすぐに理解してもらう必要があるのですが、そうかといって誰でもすぐに理解できてしまうボケでは面白くありません。「オチが読めてしまう4コマ漫画」や、「犯人の予想がついてしまう推理小説」では面白く感じないのと同じで、「突っ込みが簡単に予想できてしまうボケ」では、つまらないわけです。
 効率よく笑いを誘うには、「面白味となる捻りを入れつつも、お客に考えさせる手間を与えない」という問題をクリアーしなくてはいけません。そして、それを解決するのが、瞬間的な突っ込みなのです!
 ボケ役がボケると、お客はすぐに話を整理し始めます。ところが、その矢先にツッコミ役が突っ込みます。突っ込みは、ボケの説明も兼ねているため、それをすることで「あぁなるほど。そういうボケだったのか!」と、瞬時に理解できます。
 つまり、お客に話を整理する労力を与えず、瞬間的にボケの全容を明かすことで、「思いもよらぬボケの解明に、どっと笑いが込み上げてくる」という仕組みなのです!(※1)
 実は、単純なセリフの流れの中にも、こういった笑いをとる理論が隠されているのですよ。(^_^)

 [瞬間的な話題の移行]

 ボケに対して突っ込んだはいいですが、その後、沈黙があってはいけません。スムーズな流れを継続するために、次の話題に瞬間的に移行しなければいけません。スムーズな流れからは、リズムが生まれます。落語でも、長セリフを調子に併せてポンポンと語ったときは、お客も拍手喝采、えもいわれぬ心地良さを感じるものです。
 本来、人は単純な言葉よりも、リズムを加えた方が心地良いと感じます。俳句などが良い例です。テレビCMでも、商品を覚えてもらうために、「商品名を曲やリズムに乗せて宣伝する手法」は、もはや常識となっています。
 演芸も同様です。セリフにテンポが加わると、場に活気やノリがでてきます。そういう場では、面白さが何倍にもなって伝わるため、お客を爆笑の渦に巻き込むことも可能になるのです。しかし、そのためには相方との掛け合いで、次にいうべきセリフが自然と口からでてくるように何十回、何百回とそのネタを反復練習する必要があります。芸人は、表面上では適当なことをいっているようでも、陰ではそういった努力をしています。細かいことですが、人に見せる芸を成り立たせるには、地道な努力が必要なのですね。

 余談ですが、瞬間的に話が変わっていく演芸に、ショートコントがあります。
 落とすタイミングも話の流れに大きく影響してきますが、「話を引っ張るだけ引っ張ってから落とす」や、「話が始まったと思ったらアッという間に落とす」など、パターンは様々です。ショートコントでは、早いタイミングで落とす手法がよく使われますが、これは気持ちよく話が展開していくための、ハイテンポな流れをつくる効果に役立っています。


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